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【論文】観測をつなぎ、知を生み出す


日本沿岸の魚類多様性の季節変化を読み解いた研究
【Scientific Reports】日本沿岸の魚類多様性、その季節変化を読み解く
https://www.nature.com/articles/s41598-026-52959-w

その観測の仕組みがどのように始まったのか
【Scientific Data】CRESTからANEMONEへ、受け継がれる全国観測
https://www.nature.com/articles/s41597-026-08246-4



日本沿岸の魚類多様性、その季節変化を読み解く━━━ 観測をつなぎ、知を生み出す【Scientific Reports】

各地で積み重ねた観測をつなぐと、一つの場所からは見えなかった自然の姿が浮かび上がります。
ANEMONEに関わる二つの論文から、全国の観測が新しい知へとつながる過程を、2回に分けてご紹介します。


日本の海には、どんな魚が、いつ、どこにいるのか。



水に含まれる生き物のDNAから生態系を調べる「環境DNA」の観測網ANEMONE。その1,765回の調査データを用いた研究が、『Scientific Reports』に掲載されました。魚の多様性は南ほど高く、その南北差は冬よりも暖かい季節に大きくなることが分かりました。背景には、南方から一時的に来遊し、冬にはその場所で生き残れない魚たちが関わっている可能性があります。

魚の種類が増えたという記録も、その意味は一様ではありません。一時的に訪れる魚が増えたのか、その場所に定着する魚が増えたのか。数の変化を、魚たちの顔ぶれや季節とともに捉えることが、海の変化を理解する手がかりになります。

この発見を支えたのは、全国で観測に関わる皆さんと、ANEMONEが築いてきた「比べられる土台」です。共通の手順での採水・分析と、共通のデータベースへの蓄積によって、地域ごとの観測が、海全体の動きを読み解くデータへとつながりました。

そしてデータがオープンであることは、さらに先の可能性を開きます。収集時には想定していなかった問いを、誰かが持ち込む。そこから、一つの研究室やプロジェクトだけでは生み出せなかった発見が生まれる。今回の論文は、その可能性を示す成果の一つです。

10年後、どんな問いが重要になるのかを、今すべて予測することはできません。
だからこそ、今日の観測を、未来の問いにも応えられる共有財産として、みなさんと一緒に積み重ねていきたいと考えています。
ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点(NP拠点)は、自然を測り、理解し、次の行動につなげる仕組みを、これからも広げていきます。

▼論文はこちら(英語)
https://www.nature.com/articles/s41598-026-52959-w


観測をつなぎ、知を生み出す――CRESTからANEMONEへ、受け継がれる全国観測【Scientific Data】

各地で積み重ねてきた観測が、年月を経て、新しい発見につながる。記録を残し、つなぎ続けることの大切さを、改めて感じます。

前回は、環境DNA観測網ANEMONEのデータから、日本沿岸の魚類多様性の季節変化を読み解いた研究をご紹介しました。今回は、その観測の仕組みがどのように始まったのかをたどります。

2018年、CRESTプロジェクトのチームが取り組んだのは、「全国各地で、同じ方法による定期観測を続けたら、日本全体の生物多様性を捉えられるのではないか」という試みでした。

この試みの要となったのが、採水からろ過、環境DNAの分析まで、調査手順をそろえた「プロトコル」です。

全国の記録をつなぐには、結果の違いが、自然の違いによるものなのか、調査方法によるものなのかを見極められることが重要です。離れた場所で、異なる人が観測しても、比較できる記録を残す。そのための共通の手順を、全国の現場で実践しました。

2018年1月から2019年3月にかけて、日本全国211地点で690サンプルを採取。水に含まれるDNAから、171科1,477種の魚類を検出しました。一部の地点では、毎月、あるいは2週間に一度、観測を重ねました。

この調査の手順と得られたデータをまとめた論文が、学術誌『Scientific Data』で公開されました。当時の取り組みは、現在の全国環境DNA観測網ANEMONEへと受け継がれており、今回公開されたデータも、今後データベース(ANEMONE DB)への収録を予定しています。

水を採るという参加しやすい入口から、多様な魚類の情報を得て、地域や季節を越えて分析できるデータへつなぐ。ここに、現在のANEMONEへと受け継がれた大きな価値があります。
前回ご紹介した魚類多様性の季節変化も、こうした共通の観測基盤があってこそ読み解けたものです。各地で丁寧に積み重ねられた記録が、新しい発見を支えている。そのことに、観測を続け、データを開いていく意義を改めて感じます。

同じ方法で観測する。記録をつなぐ。データを開く。
その積み重ねから、一つの場所、一つの研究だけでは見えなかった自然の姿が浮かび上がってきます。

各地で水を採り、観測を続けてくださった皆さんの記録が、次の研究を支えていること。そして、そのデータには、まだ私たちが思いついていない問いに応える可能性があること。そこに、ANEMONEを育てていく喜びと、大きな期待があります。

CRESTで始まった取り組みを、これからの観測と発見へ。
ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点(NP拠点)は、各地の皆さんとともに共通の方法による観測を続け、今日の記録を、未来の自然を理解するための共有財産へとつないでいきます。

▼論文『Scientific Data』(英語)
https://www.nature.com/articles/s41597-026-08246-4

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